1. はじめに
Javaのバージョン管理が重要な理由
Javaは、Webアプリケーション、モバイルアプリ、業務システムなど、さまざまなソフトウェア開発に広く使われているプログラミング言語です。その進化は著しく、バージョンごとに新機能の追加や仕様の変更が行われてきました。
たとえば、Java 8ではラムダ式やStream APIが導入され、Java 11以降では一部のモジュールが非推奨となり、実行環境やライブラリとの互換性にも影響を与えるようになりました。こうした変更に適切に対応するには、自分の開発環境で「どのJavaバージョンが使われているのか」を常に把握しておくことが欠かせません。
また、企業や開発現場では、セキュリティ対策や長期サポート(LTS)の観点から、特定のJavaバージョンを指定して運用しているケースも少なくありません。そのため、使用中のバージョンが古すぎる場合、サポート終了によるリスクを伴うこともあります。
本記事の目的と対象読者
この記事では、Javaのバージョン確認方法から、インストール、アップデート、トラブル解決までを包括的に解説します。対象とする読者は以下のような方です:
- Javaを使った開発を始めたい初心者
- 使用中のバージョンを確認したい中級者
- 環境整備やアップデートでトラブルを感じている実務者
Windows・Mac・Linuxといった主要OSごとの手順や、開発ツールを利用した確認方法も詳しく紹介するため、どの環境でも対応できるように構成しています。
Javaバージョンに関する正確な知識を身につけ、安全かつ快適な開発環境を整える手助けとなることを目的としています。
2. Javaのバージョン確認方法
2.1 コマンドラインでのJavaバージョン確認方法
java -version
コマンドを使う
最も基本的かつ確実な方法が、コマンドラインを使ってJavaのバージョンを確認する方法です。OSに関係なく使用できます。
手順(共通):
- ターミナル(Mac/Linux)またはコマンドプロンプト(Windows)を開きます。
- 以下のコマンドを入力して実行します。
java -version
出力例:
java version "17.0.2" 2022-01-18 LTS
Java(TM) SE Runtime Environment (build 17.0.2+8-LTS-86)
Java HotSpot(TM) 64-Bit Server VM (build 17.0.2+8-LTS-86, mixed mode, sharing)
この結果から、「Java Runtime Environment(JRE)」のバージョンが17であることが分かります。
javac -version
でJDKバージョンを確認
Javaのコンパイラであるjavac
のバージョンも確認しておくと、JDKが正しくインストールされているかどうかを確認できます。
javac -version
出力例:
javac 17.0.2
Javaの実行ファイルの場所を確認する
複数のバージョンがインストールされている場合、どの実行ファイルが使われているのか確認するのが重要です。
- Windows:
where java
- Mac/Linux:
which java
出力されたパスを確認することで、Javaがどこにインストールされているかが分かります。
2.2 GUIを使って確認する(Windows)
コマンド操作に不慣れな場合は、WindowsのGUIからJavaのバージョンを確認することも可能です。
Javaコントロールパネルで確認
- 「スタートメニュー」から「Java」と入力して「Javaの構成」を開きます。
- 「Java」タブをクリックし、「表示」を選択します。
- インストールされているJavaのバージョン一覧が表示されます。
これにより、複数バージョンが共存している場合でも、一覧で確認ができます。
2.3 GUIを使って確認する(Mac)
MacでもGUIからJavaのバージョンを確認可能です。
システム環境設定からの確認
- Appleメニューから「システム設定」 > 「Java」を開きます。
- Javaコントロールパネルが起動します。
- 「Java」タブを選び、「表示」をクリックします。
Windowsと同様に、バージョンの詳細情報が確認できます。
2.4 Eclipseを使ってJavaバージョンを確認する
開発環境としてEclipseを使っている場合は、プロジェクトごとのJavaバージョン設定を確認することが重要です。
手順:
- Eclipseを起動し、対象のプロジェクトを右クリック。
- 「プロパティ」 > 「Java コンパイラー」へ進みます。
- 「コンパイラー準拠レベル(Compiler compliance level)」の欄に、使用中のJavaバージョンが表示されます。
また、Eclipse自体が利用しているJDKのバージョンは、以下の手順で確認できます。
- 「ウィンドウ」 > 「設定」 > 「Java」 > 「インストール済みのJRE」で確認。
- 使用中のJREの詳細をチェックすれば、JDKのパスとバージョンが分かります。
3. Javaのインストール方法
3.1 Windowsでのインストール手順
Oracle公式サイトからJDKをダウンロード
- ブラウザで Oracle公式ダウンロードページ にアクセスします。
- 最新の「Java SE Development Kit(JDK)」の項目を見つけ、Windows用のインストーラー(
.exe
形式)を選択します。 - ライセンスに同意してダウンロードを開始します。
インストーラーを使ったインストール
ダウンロードが完了したら、インストーラーを実行し、以下の手順に従って進めます:
- インストールディレクトリは基本的にデフォルトで問題ありません。
- 数分でインストールが完了します。
環境変数の設定(重要)
Javaをコマンドラインから利用するには、環境変数の設定が必要です。
- 「コントロールパネル」 > 「システム」 > 「システムの詳細設定」 > 「環境変数」を開きます。
- 「システム環境変数」の中から
Path
を選択し、bin
フォルダのパス(例:C:\Program Files\Java\jdk-17in
)を追加。 JAVA_HOME
という新しい変数を作成し、JDKのパスを指定します。
設定が完了したら、コマンドプロンプトで java -version
を実行し、正しくインストールされているか確認しましょう。
3.2 Macでのインストール手順
JDKのダウンロードとインストール
- Oracleの公式ページにアクセスし、Mac用のJDK(
.pkg
形式)をダウンロードします。 - ダウンロードしたファイルをダブルクリックしてインストーラを起動し、画面の指示に従ってインストールします。
ターミナルでの確認と環境変数の設定
インストール後、ターミナルを開いて以下のコマンドを実行します:
java -version
表示されるバージョンが最新のものであれば成功です。
必要に応じて、.zshrc
または .bash_profile
に以下のように記述し、JAVA_HOME
を設定します:
export JAVA_HOME=$(/usr/libexec/java_home)
export PATH=$JAVA_HOME/bin:$PATH
設定後は source ~/.zshrc
を実行して反映させます。
3.3 Linuxでのインストール手順
パッケージマネージャーによるインストール(Ubuntu/Debian系)
sudo apt update
sudo apt install openjdk-17-jdk
その後、バージョン確認:
java -version
javac -version
パッケージマネージャーによるインストール(CentOS/RHEL系)
sudo yum install java-17-openjdk-devel
複数バージョンがある場合の切り替え
Ubuntuなどでは、以下のコマンドでインストール済みのJavaバージョンを切り替え可能です:
sudo update-alternatives --config java
手動インストール(tar.gzファイルを利用)
- Oracleの公式サイトからtar.gz形式のJDKをダウンロード。
/usr/lib/jvm/
等に展開。- シンボリックリンクや環境変数を手動で設定。
この方法は、最新バージョンや特定のJDKディストリビューションを使いたい場合に便利です。
4. Javaのアップデート方法
4.1 WindowsでのJavaアップデート
Javaコントロールパネルからの手動アップデート
WindowsにJREがインストールされている場合、以下の手順でアップデートが可能です。
- 「スタート」メニューから「Java」と入力し、「Javaの構成」を開きます。
- 「更新」タブをクリック。
- 「今すぐ更新」を押すと、最新版の確認とインストールが開始されます。
この方法はJREに限定されるため、開発用のJDKを利用している場合は、Oracleの公式サイトから最新版を手動で再インストールするのが基本となります。
手動でJDKを再インストールする方法
JDKのアップデートは「最新版をダウンロードしてインストール」することで対応します。
- Oracle公式ページにアクセス。
- 最新のJDKをダウンロード(旧版は削除しても可)。
- インストール後、必要に応じて
JAVA_HOME
とPath
を再設定します。
4.2 MacでのJavaアップデート
Javaコントロールパネルからアップデート(JREの場合)
- 「システム設定」 > 「Java」からコントロールパネルを開きます。
- 「更新」タブをクリック。
- 「今すぐ更新」を実行します。
JDKをアップデートする方法
Macの場合も、JDKは手動で最新版をインストールするスタイルが一般的です。
- Oracleの公式ページまたはAdoptiumなどのJDK配布サイトから最新版をダウンロード。
.pkg
ファイルをダブルクリックしてインストール。- 以前のバージョンが不要であれば、アンインストールしても問題ありません。
JAVA_HOME
の再設定を忘れずに
新しいバージョンを使用する場合は、JAVA_HOME
のパスが変更されることがあるため、以下のコマンドで再設定します:
export JAVA_HOME=$(/usr/libexec/java_home)
4.3 LinuxでのJavaアップデート
パッケージマネージャーでのアップデート
Linux環境では、OSに組み込まれたパッケージ管理システムを使ってJavaのアップデートが可能です。
Ubuntu/Debian系:
sudo apt update
sudo apt upgrade openjdk-17-jdk
CentOS/RHEL系:
sudo yum update java-17-openjdk-devel
複数バージョンの切り替え
新旧のJDKが共存している場合、使用するバージョンを手動で切り替える必要があります。
sudo update-alternatives --config java
sudo update-alternatives --config javac
インタラクティブに一覧が表示され、利用したいバージョンを選ぶだけで切り替えが可能です。

手動アップデート(tar.gz利用)
パッケージに依存せず、任意のバージョンを導入したい場合は、tar.gz形式のJDKをダウンロードして手動で展開・パス設定する方法もあります。従来のJDKを削除し、新たにパスと環境変数を設定すればOKです。
5. よくあるトラブルと対処法
5.1 バージョン確認時に「java は内部コマンドまたは外部コマンドとして認識されていません」と表示される
原因
- 環境変数
Path
にJavaのパスが設定されていない。 - Javaが正しくインストールされていない。
対処法
- JDKが正しくインストールされているか確認する。
- 環境変数
Path
に以下のようなJavaのbinディレクトリを追加する(例):
C:\Program Files\Java\jdk-17in
- 追加後、コマンドプロンプトを再起動して再度
java -version
を実行。
5.2 複数のJavaバージョンが混在していて意図しないバージョンが呼び出される
原因
- 複数のJDK/JREがインストールされており、環境変数の優先順位によって異なるバージョンが使用されている。
対処法(Windows/Mac/Linux 共通)
- コマンドラインで
where java
(Windows)またはwhich java
(Mac/Linux)を使い、現在使われているJavaの実体を確認。 - 使用したいJavaのパスを
Path
(Windows)や.zshrc
、.bash_profile
に明示的に記載。 - Linuxでは
update-alternatives
を活用してバージョンを切り替える。
5.3 EclipseなどのIDEでビルドエラーが出る(例:「コンパイラー準拠レベルが一致しません」)
原因
- プロジェクトで設定されているJavaバージョンと、Eclipseが認識しているJDKのバージョンが異なる。
対処法
- Eclipseの「ウィンドウ」→「設定」→「Java」→「インストール済みのJRE」でJDKのパスを確認。
- プロジェクトを右クリック→「プロパティ」→「Java コンパイラー」で「コンパイラー準拠レベル」を調整(例:Java 17に合わせる)。
5.4 Javaのアップデート後に古いバージョンが残っている
原因
- Javaは新しいバージョンを上書きインストールせず、旧バージョンを残す仕様。
- 複数のバージョンが混在することで、設定ミスやセキュリティリスクの原因になる。
対処法
- 不要なバージョンは「アプリと機能」(Windows)や
/Library/Java/JavaVirtualMachines/
(Mac)から削除。 - 削除後は、
Path
やJAVA_HOME
の環境変数が正しく更新されているかを再確認。
5.5 Java Webアプリで「Unsupported major.minor version」エラーが出る
原因
- コンパイルに使用したJavaバージョンと、実行環境のJavaバージョンが一致していない(例:Java 17でビルド → Java 8で実行)。
対処法
- Javaの実行環境のバージョンを確認し、コンパイル時にターゲットバージョンを明示する(例:
javac -target 1.8
)。 - または、実行環境側のJavaをアップグレードする。
6. FAQ(よくある質問)
ここでは、Javaのバージョンに関して初心者から中級者までがよく抱く疑問とその回答をまとめました。検索ニーズの高い質問を中心に、できるだけ実用的でわかりやすい形で解説しています。
Q1. JREとJDKの違いは何ですか?
A:
JRE(Java Runtime Environment)は、Javaで作られたアプリケーションを「実行」するための環境です。一方、JDK(Java Development Kit)は、Javaプログラムを「開発・コンパイル・実行」するための一式が揃ったツールです。開発者は基本的にJDKをインストールする必要があります。
Q2. Javaのバージョン番号の意味は?
A:
Javaのバージョンは、たとえば「Java 17.0.2」のように表記されます。
- 最初の「17」がメジャーバージョン(Java 17)
- 「0」がマイナーバージョン
- 「2」がアップデート番号を表します
Java 9以降は新しいバージョン番号の命名規則(時限リリース方式)になっており、半年ごとに新バージョンが出るようになりました。LTS(長期サポート)バージョンは特に企業で重視されます(例:Java 8、11、17、21など)。
Q3. 複数のJavaバージョンがインストールされていても問題ありませんか?
A:
はい、複数バージョンの共存は可能です。ただし、意図しないバージョンが使われないように、環境変数やIDEの設定で明示的に使用バージョンを指定することが重要です。Linuxでは update-alternatives
、WindowsやMacでは Path
や JAVA_HOME
の管理がポイントになります。
Q4. 古いJavaバージョンはアンインストールしたほうがいいですか?
A:
基本的には、不要なバージョンはアンインストールするのが望ましいです。セキュリティリスクを減らすためにも、使わない古いJREやJDKは削除し、環境変数を最新のものに合わせて整理することをおすすめします。
Q5. Javaのバージョンを切り替えるにはどうすればいいですか?
A:
Windowsの場合:
Path
とJAVA_HOME
を環境変数で手動設定します。複数のバージョンを切り替えるには、バッチファイルや専用ツールを使う方法もあります。
Mac/Linuxの場合:
.bash_profile
や.zshrc
にexport JAVA_HOME=...
を記述して切り替えます。- また、Macでは
/usr/libexec/java_home -v バージョン
を使って簡単に切り替えることも可能です。
Q6. Javaのアップデート通知が頻繁に表示されます。無視してもいいですか?
A:
開発や実行に直接関係しない限り、短期的には無視しても動作上の問題は少ないですが、セキュリティの観点からは早めのアップデートが推奨されます。特に業務用途やWebアプリでJavaを使用している場合は、最新バージョンへの更新が強く求められます。
7. まとめ
Javaのバージョンは、開発環境の安定性やアプリケーションの互換性、さらにはセキュリティにも深く関わる重要な要素です。バージョンが合っていないことで起こる不具合やトラブルは決して珍しくありません。
この記事では、以下のポイントを体系的に解説してきました:
- Javaのバージョンを確認する方法(コマンドライン、GUI、IDE)
- OS別(Windows・Mac・Linux)のインストール手順
- 安全にアップデートを行う方法とその注意点
- 実際によくあるトラブルとその解決方法
- 初心者がつまずきやすい疑問へのFAQ
これらを正しく理解し、実践することで、Javaのバージョン管理に自信が持てるようになります。
特にこれからJavaを学ぶ方や、新しい開発環境を整えたいという方にとって、JDKの導入からバージョンの切り替え・更新までをスムーズにこなせることは、スキルアップにも直結します。
開発環境の整備は、プログラミングの成果やモチベーションに大きく影響します。ぜひ本記事を参考に、信頼性のある最新のJava環境を構築してください。